こもだ法律事務所コラム

こもだ弁護士のコラム 法テラス

改正相続法の施行と実務対応(特に配偶者の居住権の保護について)

2019.10.17

改正相続法の施行と実務対応
(特に配偶者の居住権の保護について)

令和元年 10月 15日

〒604-0991
京都市中京区寺町通竹屋町上ル行願寺門前町2-2
こもだ法律事務所
弁護士 薦 田 純 一
TEL 075-253-1192 ・ FAX 075-211-4919

(参考資料)

  1. 「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」 
    法務省民事局HP(平成30年7月13日)
  2. 「民法(相続法)改正 遺言書保管法の制定ー高齢化の進展に対する対応」 
    法務省民事局参事官室・総務課(平成30年11月)
  3. 「法務局における遺言書の保管等に関する法律について」
    法務省民事局商事課 (令和元年6月11日)
  4. 「東京家庭裁判所家事第5部(遺産分割部)における相続法改正を踏まえた新たな実務運用」
    (令和元年6月13日発行)

第1 はじめに改正相続法の概要

  1. 平成30年(2018年)7月6日、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(以下「改正相続法」という)(平成30年法律第72号)」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」)(平成30年法律第73号)」が同日成立し、同年7月13日公布されました。
      そのうち(1)「自筆証書遺言の方式を緩和する方策」は、平成31年(2019年)1月13日から施行されますが、(2)原則的に「改正相続法」は、令和元年(2019年)7月1日から施行されます。(3)但し、「配偶者居住権及び配偶者短期居住権に新設等」は、令和2年(2020年)4月1日から、(4)また、「遺言書保管法」は、令和2年7月10日から施行されます。
  2. 各々の改正や制度の趣旨
    1. まず、「改正相続法」の趣旨は、社会の少子高齢化が急速に進展するという社会経済情勢の大きな変化に伴って、相続開始時の配偶者(とくに妻)の高齢化が進行し、配偶者の生活の保護を図る必要性が高まっているとの観点から、相続に関する制度の見直しを図ったものです。
      具体的には、(イ)配偶者の居住権の保護、(ロ)持戻し免除の意思表示の推定、(ハ)遺産分割前の預貯金の払い戻し制度、(ニ)自筆勝訴遺言の方式の緩和、(ホ)遺留分減殺請求権の効力の見直し、(ヘ)相続人以外の者の貢献を考慮する制度などが主な改正点です。
    2. また、「遺言書保管法」の趣旨は、高齢化の進展などの社会経済情勢の変化に鑑みて、相続を巡る紛争を防止するために、「自筆証書遺言」の遺言書を法務局で保管する制度を新たに設けることにしました。

第2 相続の際の配偶者(とくに妻)の居住権を保護するための方策について

  1. 配偶者居住権
    1. 最近の高齢化社会の進展によって、夫の死亡にともなう相続の開始時点で、配偶者(とくに妻)の年齢も高くなってきています。その場合、高齢の配偶者(妻)は、当然永年住み慣れた「自宅」に住み続けることと共に、その後の生活資金も確保しておきたいと希望すると思います。ところが、従前の相続法の下では、他の相続人(子や場合によっては夫の兄弟姉妹)との関係で、「自宅」に住み続けられなくなったり、「自宅」を確保するためには、夫が残してくれた預貯金の多くを諦めなければならなくなったりするようなことが多く見られるようになりました。
      というのは、配偶者と子が相続人の場合でさえ、配偶者の相続分は、2分の1に過ぎず、配偶者が「自宅」を確保しようとすると、子に夫が残してくれた預貯金の中から子に対して遺産全体の2分の1に当たる「代償金」を支払う必要があるからです。
    2. そこで、改正法は、「被相続人(夫)の配偶者(妻・内縁の妻は含まれない)は、被相続人の遺産に属した建物(自宅)に、相続開始の時に居住していた場合(生活の本拠としていたこと)において、『遺産分割(協議・調停・審判江御含む)によって配偶者居住権を取得するとされたとき』や、『配偶者居住権が遺贈(又は「死因贈与」)の目的とされたとき』には、その居住して居た建物(自宅)の全部について、無償で使用及び収益する権利(配偶者居住権)を取得する。」と定めました(民法1028条第1項)。
      この規定は、令和2年4月1日から施行されます。
    3. その「配偶者居住権」の「存続期間」は、原則として「配偶者の死亡時まで」ですが、遺産分割協議や調停、審判や遺言書で、それより短い存続期間を定めることも出来ます。但し、存続期間を定めた場合には、後に延長や更新をすることは出来ません。
    4. また、「配偶者居住権」の対抗要件は「設定登記」で、居住用建物の所有者になった者は、設定登記をすべき義務を負います(民法1031条第1項)。
    5. なお、上記のように「配偶者居住権」を取得させるためには「遺贈」によることが必要とされたのは、配偶者(妻)が「配偶者居住権」の取得を希望しない場合に、「相続放棄」をすることなく「配偶者居住権」のみを拒絶できるようにしたためです。
    6. 上記のようにその「居住建物(自宅)」が「被相続人の遺産に属している」必要がありますから、その居住建物が第三者に遺贈されていたり、配偶者以外の相続人に生前贈与あるいは遺贈されているような場合には、「配偶者居住権」が認められる余地がないので注意が必要です。
    7. また、遺言によって取得することになった「配偶者居住権」は、配偶者の「特別受益」となりますが、配偶者(とくに妻)のその後の生活資金を確保する趣旨から、「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が配偶者に対してなした配偶者居住権の遺贈については、持戻し免除の意思表示をしたものと推定される」ことにしました(民法1028条第3項・903条第4項)。
    8. さらに、「配偶者居住権」の評価額の算定方法も検討する必要がありますが、この点は次回以降に検討させて頂きます。
  2. 配偶者短期居住権
    1. 相続人の一人が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合には、判例(最判平成8年12月17日民集50巻10号2778頁)によって、被相続人とその相続人との間で、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする「使用貸借契約」が成立していたものと推認されるとして保護が図られていました。
      ところが、被相続人が居住建物を遺贈していたり、反対の意思を表示した場合には保護されないことになるので、最低6か月間は配偶者の居住権を保護するための制度を創設することにしました。
    2. そこで、「配偶者(内縁の配偶者は含まない)が、被相続人の遺産に属した建物に相続開始の時に、無償で居住していた(生活の本拠としていた)場合」という要件を満たせば、法律上当然に、以下のいずれかの「存続期間」については、居住建物取得者に対し、無償で居住する権利(「配偶者短期居住権」)を有するとされました(民法1037条第1項・第3項)。
      1. (配偶者が遺産共有持分権を有している場合は)遺産分割によって居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6か月を経過するいずれか遅い日」まで。または、
      2.  
      3. 「(配偶者が遺産共有持分を有しない場合、すなわち、居住建物が配偶者以外に遺贈されたり、特定財産承継遺言がなされた場合あるいは配偶者が相続放棄をした場合)には、居住建物取得者から配偶者短期居住権の消滅を申入れされた日から6か月を経過する日」まで。
        この規定も、令和2年4月1日から施行されます。
    3. また、この場合には、取得した「配偶者短期居住権」について、遺産分割において配偶者の具体的相続分からその価値を控除する必要がありません。

今回は、相続法改正の中でも重要な「配偶者の居住権の保護」について検討して見ました。次回は、更に「預貯金の払い戻し制度」の創設などについて検討して見たいと考えています。

以上

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